台風10号が通過しました。噂に違わず被害がでています。被災者の皆様にお見舞い申し上げます。
現場での声を聞くとすごい台風だったことがわかりますが、遠くにいてテレビを見ている方からみると、最強の台風ではなかったのかな??と思ったに違いありません。
もちろんかなり強い台風ではあったのですが、その割に被害がそこまで大きくならなかった(停電数など十分大きな被害だと思いますが)と感じたのではないでしょうか。
一般に台風は同じ強さでも経路によって被害を受ける地域は大幅に変わります。また上陸すると著しく力を失ったり、海水温度により強さは大幅に上下します。もちろん気象庁などは出来る限り正確に予報をしようとしていますが、完全ではありません。そのため、状況をわかり次第逐一公開します。それでもズレたり、外れたりすることはあります。
気象庁では、ホームページで全般気象情報を逐一発表しています。これを見ると一連の流れがわかります。
ちなみに台風10号に関する気象庁予報部の発表の第1号は9月2日5時22分に発表され、「5日から7日にかけて、南西諸島から西日本、東日本太平洋側の広い範囲で、暴風や警報級の高波、大雨となる可能性がある」と幅広い情報となっており、台風の規模に対しても「6日は非常に強い勢力を維持したまま」という表現に留まっております。
それが9月3日11時22分の第11号では、「特別警報級の勢力まで発達し」の文言が付け加えられています。このころになると進路もある程度特定され、被害が大きくなるような台風に発達することが予想されています。17時31分の台14号には雨量予想などもだいぶ詳しくなってきています。
9月5日5時27分の第32号になると、6日午前に特別警報級の勢力で沖縄地方へ最接近が確実視されるようになり、中心気圧が920ヘクトパスカル、最大瞬間風速は70mと桁違いの巨大台風が現実にすぐそばに接近してきていることを知らせています。各地の雨量などもより具体的な数値になっています。
非常に細かく情報が発表され、9月5日19時59分には、第51号が発表になります。緊急のようでこの51号には、本文がありません。「大型で非常に強い台風」という表記になり、6日夜には鹿児島県にかなり接近、6日昼過ぎには暴風域に入る見込みということをしらせています。9月5日22時59分の第55号では、鹿児島県に特別警報を発表する可能性があるという情報が掲載されています。5日22時には920ヘクトパスカルと勢力を維持しつつ近づいていることがわかります。
翌朝9月6日5時13分の第62号では、非常に強い勢力を維持して九州に接近、そして「上陸のおそれ」を発表しています。九州の西側を通ることは天気予報などでもわかっていましたが、より九州側を通るのでは?最悪上陸するのでは?という内容です。
しかしそこから2時間後の7時42分の第65号では、本文なしで「勢力をやや弱めました」と発表。特別警報を発表する可能性は小さくなったことを知らせています。この時点では我々もさらに警戒しなければならないと思っていたタイミングでした。気象庁は小さな変化を見逃さず発表していることがわかります。ただ引き続き警戒が必要なことにはかわりがありません。
11時20分の第70号になると、夜間に北上し上陸する可能性がなくなった感じの表現になっています。ただ「7日にかけては非常に強い勢力を維持したまま」と引き続き警戒しなければならないことを知らせています。
夕方17時49分には、見出しは最大級の警戒を呼びかけながら、中心気圧が945ヘクトパスカルまで急激に上がっている(つまり弱まっている)ことを知らせています。とはいえこれでも巨大台風にはかわりがありません。85号(23時45分)でも気圧が変わっていないことから、強さは維持していることがわかります。
翌朝7日5時12分には、第91号が発表されていて、平戸市の西南西を北上して対馬にかなり接近することを知らせています。この状況でも945ヘクトパスカルということで強さは維持しています。10時53分の第98号になると台風が日本から離れつつあると、一定の危険が去った事を知らせています。西日本や東日本でも土砂災害などに注意という文言が残っています。台風は955ヘクトパスカルと弱くなっており、台風からの距離も離れてきています。16時42分の第104号では、台風が970ヘクトパスカルと更に弱まったことを知らせています。
すでに報道されているとおり、上記で九州最接近の状況で、気圧が上がっていることが当初より勢力を弱めた原因は、直前の台風9号の通過で海面水温が下がり、動力源となる水蒸気を十分に取り込めなかったこととされています。8月の九州近海の海面水温は熱帯並み高かったのですが、9号が通過した2日頃を境に低下したようです。台風が海上を通過すると、海面近くの暖かい水と深い水が強風でかき混ぜられたり、日光が遮られたりして水温がさがるようで、これが主原因ではないか?と井荒れています。また上空の気流の影響で台風構造が崩れやすくなったという意見もあります。そんなことで、台風の強弱は変わってきます。今回と逆で水温が更に上がっていたら、とてつもない被害がでてしまった可能性があります。
そんなわけで、天気予報を十分に聞いて対策しましょう。そして天気予報も時間によって変化します。なので台風が接近したらできるだけ新しい情報を得て対策をする必要があります。予報はどちらかというと厳しい方向にでますが、やはりより悪い方向で考えておいたほうが良いでしょう。ちょっと長くなりましたが、台風10号は、上記の通りで最強の台風になり損ねましたが、怖い台風だったことには変わりがありません。