ブロック塀の耐震診断

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それでいいのか?ブロック塀

塀なので、どの法規に適合?という部分から躓きがちですが、ズバリ建築基準法です。2018年6月18日に発生した大阪北部地震で注目を浴びたブロック塀。マスコミは概ねブロック塀の適法性について論じていますが、実際どうなのでしょうか?建築基準法は「最低の基準」を定めていて、それで十分安心、というものではないので、木造住宅などでは耐震等級2とか3とか建築基準法を上回る強度を実現させることが主流になってきています。なのでブロック塀も建築基準法を満たすことを目的、とすると安全を確保できない可能性があります。


建築基準法上のブロック塀の規格と欠点

大阪北部地震を見て感じたのが

・ブロック塀の最高高さは2.2m?
地盤面から2.2mであって、ブロック塀自体の高さが2.2m(11段)ではないことを勘違いさせてはいけない点、またそれは、控え壁があり、鉄筋が適切に入って、基礎形状が堅固な逆T形やL形で改良土で埋戻し時に十分に締め固めた・・・と条件があるのです。
基礎がI形(通常)で、普通土の場合、控え壁がある場合の上限は1.4m、控え壁がない場合は1.2mとなります。法体系は比較的単純ですが、上記を忘れると判断を誤ることになります。2.2mが1人歩きすると危険です。基本は1.2mまで、と考えた方が無難です。

・控え壁は3.4m毎
実際に3.4m毎の控え壁は狭い東京の宅地にあっては「ひたすら邪魔」ですね。しかも片側からだと無い面側に倒壊しやすくなるので、控え壁を施工する場合は基礎からしっかり施工しなければなりません。過去に調査したほとんどの控え壁は、ただ単に直行に取り付けられていただけで安全に不安が残る物ばかりでした。きちんと施工しても片側だと不安が残るので、控え壁を作れば安全!とは思わないほうが賢明です

・鉄筋の有無
鉄筋があれば、バラバラに倒壊することが減る反面、倒れるときは板上に倒れて危険な場合もあります。この際高ければ高いほど危険性は増すわけで、鉄筋を入れたから高い壁を作って良いとは考えない方が賢明です。鉄筋の有無だけではブロック塀の安全性はチェックできません。

・ブロック塀の劣化
ブロック塀の寿命は一般的に30年と言われています。状況によって大きく変わってきますし、メンテナンスを行っていなければ更に短くなると思われます。ブロック塀は基本雨風にさらされ続けます。それでもある程度までは耐久性を維持しているわけですから、立派と言えば立派です。しかし中に入っている鉄筋は水が入ってくれば錆びるわけで・・・表面の耐久性だけでなく内部の鉄筋の耐久性も考えるべきです。その際、上部をきちんと防水することも大事なのかもしれませんが、入って鉄筋が錆びて劣化したことも考慮して、必要以上の高さにしない、古くなったら取り壊して低い塀に取り替える、などが重要だと思います。


既存コンクリートブロック塀の耐震診断指針(案)・同解説

現在のブロック塀の診断についてのマニュアルは「既存コンクリートブロック塀の耐震診断指針(案)・同解説」が主だと思います。(案)という部分が気になると思いますが、2014年と比較的新しい指針案ということで信頼を置ける指針だと思います。
同指針では、診断を行える技術者を定め、一次調査(目視調査)を行い一次診断(健全性)を診断します。二次診断が必要かどうか?を判断し、必要に応じて二次調査(精密調査)を行い、二次診断(改修等の必要性)をして、現状維持か、要改修、要建替(もしくは除去)などを判断します。
塀の金額は建物に比べて安価な場合が多く、現実的には現状維持か建替になる場合が多いです。また段数を減らす工事を行うこともあります。ブロック塀は低ければ危険はかなり減りますので。

なまあず本舗設計室のブロック塀耐震診断

なまあず本舗は構造設計者としての視点で、住宅の耐震診断のオプション業務として診断を行います。もちろん単独でも診断をすることもできます。
近年では、住宅の耐震診断・改修に合わせて、ブロック塀の段数を減らす工事が多いです。減った分プライバシーが保てなくなる場合は、上部に目隠しのついたてを立てたりします。補強の場合は敷地内に控え壁がでるのが嫌がられることが多く、実はほとんど実施できていません。
個人的にはブロック塀は3段くらいで倒れても問題ない高さで抑えるべきで、それ以上の目隠しなどが必要な場合は他の手段を講じた方がいいと思います。
不安に思ったら是非ご相談くださいませ。