木造3階建ての外壁仕上げと防水

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いしづか
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木造3階建ては屋根や外壁、サッシ周りからの雨漏りが多いのが特徴です。ほぼ軒の出がない屋根、複雑な形状の屋根、階高が低くバルコニーの立上りがないなど。ここでは耐震と関係ないが木造3階建ての欠点について説明していきます。前のコーナーはこちら

木造3階建ての耐震補強事例
木造3階建ての耐震補強事例と補強方法 なまあず本舗の木造3階建ての耐震補強事例 いしづか なまあず本舗設計室では、過去の多くの構造設計実績と耐震診断実績から独自に耐震診断技術を磨き、多くの診断・補強を行ってきました。ここではその例を紹介しま...

構造計算・構造設計だけが耐久性の決め手ではない現状

木造3階建ての診断を長年やっていると構造面での欠点だけでなく、他のトラブルも多いのだということがわかってきました。なまあず本舗設計室は構造・耐震が得意ですが、その前に1建築設計事務所です。ここでは外壁面・屋根・防水に絞り事例を紹介していきます。

昭和後期のモルタル壁全盛の時代は、外壁にクラックができにくくすることで防水、長寿命化を図ることが多かったです。欠点はヒビが入ると雨が入り腐りやすいこと。しかしラス下に防水しており、木ずりの間の隙間も多いので、隙間が多く雨が入っても急激に腐る現象は、それほど頻発しませんでした。

しかし平成に入ると構造用合板下地でそのままモルタルを施工する「ラスカット」のような工法が増え、気密性も高まったことも相まって、ヒビ割れから雨が入って腐る事例が増えました。サイディングも継ぎ目にコーキングしただけのもの多く、雨漏りの被害が多かったです。その後、サイディングが通気胴縁、透湿防水シートの施工が一般化し、被害が急激に減りました。モルタルも通気工法が増え、被害が減る傾向にあります。

I様邸の事例(平成11年築 外壁モルタル 通気無し 下地構造用合板(もしくはラスカット)

I様邸は平成11年築で診断を行ったのは平成28年。よって17年ほど経過した木造3階建てで、中古として購入し若干の内装修繕を行ってから入居して数年が経過した建物です。雨漏りがひどいということで、ついでに耐震診断も、ということで知人を通して依頼がありました。
構造図も構造計算書もありましたが、明らかに確認を通すだけの物であり、勝手に間取りを変更していました。心配だったのか?入れられるだけたくさん、筋交いダブルを入れまくっているのですが、その分の金物はついておらず、明らかに木造3階建ての構造計算、構造設計を逸脱した建物でした。
耐震性は当然低いのですが、それ以上に通気胴縁もなく直接モルタルを施工しているので、合板と合板の継ぎ目を中心に割れがひどく、そこから雨水が入り内部で腐り白蟻も増殖・・・というさんさんたる状況でした。柱は真っ黒で、断熱材も水浸し。内壁のクロスは黒くしみていました。カビなども心配です。
この年代のものは通気をとっていないので、内部に水が浸入すると出ていかないだけでなく、発見が遅れる場合が多く危険です。

O様邸の事例(平成8年築 外壁モルタル・タイル、下地木ずり)

O様邸は平成8年築で診断を行ったのは平成24年。よって16年ほど経過したときに振動が気になるということで依頼がありました。実際の建物と計算書が異なる典型的な検査済証がない木造3階建てでした。ビルトインガレージと玄関が道路に面して、前面に耐力壁がない建物です。
下地も木ずりであり、外壁もモルタルとタイル貼りなので、ひび割れがしていました。そこで耐震補強を行いました。J開口フレームを多用し理想的な補強ができました。その際、外壁も塗り直しました。
しかし一年も経たないうちに、外壁にひび割れのような筋が出てきました。理由は、耐震補強で強くしたのは1階、2階の一部であり、補強していない部分の外壁下地は補強していないからです。揺れが減ったとはいえ、その面は3階の補強していない面でした。元々強くないところですから、また筋がでてしまっても仕方がない部分です。
もちろん外壁を全部はがし補強すれば、このようなことは起こらなかったはずなのですが、予算の問題でできない場合がほとんどです。そもそも外壁のひび割れを減らすことは可能ですが改修で完全に防ぐのは不可能に近いです。特に木造3階建ては揺れなどが複雑ですので、特に上部は難しいです。

O様邸の事例(平成16年築 外壁サイディング 通気あり、下地構造用合板)

O様邸は平成16年築で診断を行ったのは平成24年。よって築8年と比較的新しい木造3階建てでした。特に交通振動が気になると言うことで依頼がありました。
間取りは図面と同じで、構造計算もしっかり行われているはずの建物でした。しかし計算書を精査すると垂れ壁を過大に耐力計上していることが確認されました。また後日改修時にわかったのですが、手抜き施工もかなりあり、建物の耐力は予想より大幅に低いことがわかりました。それでも耐震診断の数値は1.34。1階のガレージ付近以外は頑丈でした。
この建物も前面のビルトインガレージを補強するだけで振動が大幅に激減しました。そのときに見つかった欠点も一部補修しました。
ただ他の問題点が施主の心配を増大させました。施工業者に指摘されて気がついたのですが、築浅なのにシーリングだけがやけにきれいにはがれていたのです。振動が多いから、と私は思っていたのですが、どうやらシーリング前の処理に手抜きがあり、あっさり・・・ということでした。きれいな建物なのになぜかな?と思っていたのですが、それで理由がわかりました。
通気もとっており、現状では少し水が入っても問題がなさそうなので、もう少ししたら外壁補修を行うそうです。そんな手抜きがなければ、と残念でなりません。

F様邸の事例(平成9年築 外壁サイディング 通気なし、下地構造用合板)

F様は中古木造3階建住宅購入後に、建物の欠陥に気付き、ネットを通じて相談がありました。F様は建築関係者でもあるので自分でだいぶ調査を行っていました(令和3年調査)。
今回は雨漏りについてのみ解説します。バルコニーやサッシに防水立ち上がりが不足していて、その部分からの雨漏りが繰り返されていました。その下部の壁や柱に水が伝わり、腐りかけたうえで、シロアリに食べられるという最悪な展開を過去にしていました。補修はされていますが、基礎の立ち上がりも低く、防水立ち上がりも不足しているので、再び繰り返す可能性が高いです。もちろん通気もありません。
非常に安価に流通していますが、このような木造3階建ては購入すべきではありません。もちろん2階建てでもありますので注意が必要です。

最近の木造3階建てでは・・・

最近の木造3階建ては建売でもほとんどの場合、構造用合板(もしくはダイライトなど大臣認定耐力壁)を外壁にはり、防水紙を施工の上、通気胴縁を施工しサイディングを施工しています。モルタルでも通気をとることがほとんどです。よって少しくらいひびが入って水が浸入しても防水紙を伝って下部に落ちるため、大きな問題になることは少ないです。もちろん最近は構造計算書、構造図通りに作られることがほとんどであり、強度的にも上記3例の建物より強いので、振動も少ないのが実情でしょう。また、どうしても仕上げや防水は劣化しやすいので、中古を買う場合はできるだけ新しいものにしたいものです。

 

いしづか
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2025年には、建築基準法の大幅な改正にともない、通常の木造住宅の軒高制限9m以内が、最高高さ16mになり、階高の低さによる雨漏りのしやすさは解消される見込みです。最後に、木造3階建てのトレンドと歴史について、次のコーナーで解説したいと思います。

木造3階建てトレンドと歴史
木造3階建てトレンドと歴史 いしづか この記事は、最後の補足として書かせて頂きました。ほとんどは前のコーナーまでに説明済です。前のコーナーの記事はこちら 最近の木造3階建てでは・・・ 最近の木造3階建ては建売でもほとんどの場合、構造用合板(...