地下室付きの木造住宅・混構造の耐震診断
その昔、地下室は構造計算されていません
地下室は、昔から有効活用されてきました。古い木造住宅の下に地下室がある家は珍しくありません。倉庫として利用したり、音楽室として利用されていたり、利用用途も様々です。建築基準法に定められる居室ならドライエリアがありますが、ない地下室も結構見て来たので昔は、結構あったのかもしれません。防空壕を応用したものもあったようです。
地盤データもありませんし、強度を出して安全、と言い切れるようなきちんとした設計のものだけでないので、安全性の判断は非常に難しいです。
木造住宅の地下室の種類
・構造設計に基づく地下室
確認申請で申請されているもの。鉄筋など法令に適合して作られているため極めて頑丈。居室の場合はドライエリアが併設されているものも。耐震的には強いが、地下室全般、雨に弱い。ポンプで水を吸い上げたりする設備が必須だったりする。それでも集中豪雨には比較的弱い。
・半地下の車庫や地下室
2000年あたりまでは都市型狭小住宅で結構多かったです。世田谷区等あたりで中高層にかけないためであったり、準耐火にしないためなどの理由です。半地下の場合、擁壁タイプが多く、水平構面の検討なしが主流でした。今だと審査に通らない形式が多かったような気がします。
・上部スラブがない地下室
床スラブと土圧を受ける壁のみのもので、天井は木造などで作られていました。地震力をどう流すか?など課題もあり、モデル化的にも厳しいので、現在はあまり見ることがありません。2000年あたりまでは、安価にできるのでよく見られました。
・ボックスカルバートの地下室
これも2000年あたりまで、都市型狭小住宅の部分地下で多かった形式。本来トンネルで使われる構造ですが、それを応用して地下室に使いました。壁式と異なり袖壁や耐力壁が必要ないので流行しました。
・床下を掘って作った物
ただ土を掘って作った物もありますし、コンクリートで土止めされているものもあります。確認申請はほとんど通っていません。
弊社の過去の耐震診断・補強
A寺(都下)で、上部が沈みかけていて地下室強度が厳しいということで、補強ありきの耐震診断を行ったことがあります。このケースでは、土圧に対する検討と、上載荷重に対する検討を行い、上載荷重に対する検討が不足していて、スラブがたわんでいることがわかりました。コンクリート強度はそこそこあったので補強することにしました。鉄骨を地下室に組んで、スラブが落ちないように補強を行いました。1階床の振動も減ったので効果があったと思います。
O様邸(横浜)では、地下室付きの増築を行いました。検査済証があり、構造設計された建物ですが、3号物件での申請が難しく、地下室を閉鎖し4号建物として増築申請を行いました。しかし地下室の強度は求められたので、コア抜きや鉄筋探査などを行い、強度が計算書強度を実現しているかを確認しました。意外とコンクリートの中性化が進んでいた部分があり難しかったです。O様邸の場合、地下の強度確認は3号で良かったのですが、実は上の木造を3号で検討するのが事実上不可能だったためという理由でした。
S様邸(府中市)では、地下室がかなり昔に違法に掘られたものであるため、使用停止を提言。土圧の検討と一通りの検査により、閉じることに決定。基礎スラブを施工し落下を防ぎ、上載の木造を補強しました。
なまあず本舗設計室では
非常に難易度が高く、コストもかかることから、地下室付きの耐震診断は、あまり多くやっていません。やっても性能が出ないならやる意味がありませんし、補強できないなら、更にやる意味がありません。コストをかけても、ということであればご相談ください。