大地震の教訓から建物の設計を考える

この記事は約3分で読めます。

 

熊本地震は、度重なる地震により当初よりも被害が大幅に拡大しています。余震が止まらなければ応急復旧も救出も支援物質の輸送もままなりません。早く落ち着いてくれるよう願うだけです。

さて、今回被災した建物を見ていると「古い」というくくりだけで説明できないものが多く存在します。後年になってこの地震が建物の設計、デザインでターニングポイントになるかもしれません。

テレビ放送やネットで被災している建物を見ていると、古くて耐震性が足りない木造住宅を除いても以下の点がわかってくると思います。

・木造以外でも旧耐震の建物は倒壊したり被害が大きいものがある
→鉄筋コンクリート造や鉄骨造が強い!という考えはやめたほうがいい。

・伝統的建築物(神社等)も倒壊している
→昔からの伝統的建築物が強いという信仰的な根拠のない考えはやめたほうがいい

・ツーバイフォーや耐震性の高い新築も倒壊している
→地盤の状況、増築の有無、施工の妥当性、設計の妥当性で、耐震性の高い新しい建物も安全とは限らない

・死者が出ている建物は断層沿いに直線上に並んでいる
→断層上の激震地域は非常に揺れやすい。地盤がずれてしまったらその真上の建物はたとえ新築であっても被害は免れない

・倒壊した木造家屋は1階から壊れているものが多い
→やはり耐震補強はまずは1階を優先すべき。できたら2階も行いたい。

・建物は倒壊すると、脱出するのが難しい
→家具や建具も脱出の障害になる。天井などパーツが多ければ多いほど落ちてくる確率が高い

・曲面状のタイル貼り、ガラス張りの自動車ディーラー、1階が柱のみのポーチ状の建物、バランスが悪い異種形状がくっつく建物などは被災し大破していることが多い
→構造計算の可否よりも、最初から無理をしない設計をしたほうが地震については安全なのはいうまでもないことです。

・地盤が悪いところ、盛り土などは相変わらず倒壊しやすい
→地盤対策をしっかり行うことが重要

なまあず本舗設計室は、構造計算を得意としています。しかしながら構造計算で満たしても建物は被害を受けることがあります。それを防ぐには安全率を高めるだけでなく、地盤調査をしっかり行い、その調査結果に応じた地盤対策(杭や基礎)を行って建設する必要はもちろん、複雑な形状を避け、シンプルな建物にしていくべきだと思います。建物自体が無事でも、ガラスが全部落ちてきては、人が多くいる時間では被害が多く発生していたかもしれません。タイルが商店街などで落ちてきたら、人に当たるかもしれません。外装はもちろん内装もできるだけシンプルにし、看板などは十分の強度で取り付け、定期的に点検・補修を行う・・・そいういった普通の対策が震災時の被害を最小限にとどめるために必要だと思います。既存住宅も耐震補強だけでなく、ガラスの対策、避難経路を確保するための家具配置の提案なども積極的に行っていくべきだと思います。

今回の地震で比較的新しい建物の被害が多く発生したことを教訓に、新しい建物の設計・施工に活かし、既存建物の地震対策を見直していくことが必要だと思います。なまあず本舗設計室も情報を整理しこれからの設計・診断・補強に活かしていこうと思っています。