断熱材の功罪

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おはようございます。

ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?新型コロナの規制がなくなり、久々にいろいろなところに出かけられた方も多いかと思います。私も一日は子どもを連れてテーマパークに行ってきました。天候にも恵まれたため良い休暇になったと思います。

さて、これから暑くなります。なまあず本舗では、この時期になると新築の計画や耐震・断熱リフォームの問い合わせが増えてきます。特に断熱に関してはここ10年トレンドになっています。2025年に一戸建て住宅でも省エネ住宅義務化されます。逆に今まで断熱に関しても規制がなかったことが不思議です。しかし、それだけに省エネ設計・断熱施工に関してノウハウがない設計事務所・施工店が多くあるものも事実です。実際トラブルもないわけではありません。

今回は断熱材について書きます。断熱材は外からの熱を入りにくくするだけでなく、中からの熱を外に出さないため、冷暖房の効率が良くなります。そのため省エネ義務化される前でも基本的に断熱材は入っています。

では、デメリットはどうでしょうか?まず充填不良がおこりやすいこと。これはグラスウール等で顕著でした。しかし近年は改善され、だいぶ発生が抑えられてきました。

平成初めの木造住宅のロックウール断熱材。施工をきちんとおこなっていれば、このようにきれいな状態で断熱効果が続きます。グラスウールも同様です。

次に雨漏りなどの発見が遅れることです。我々耐震診断を行っていて、感じるのが断熱材が多少あるだけでも雨漏りなどの発見精度がかなり下がることです。最近は更に断熱材の厚みが厚くなってきて、施工不良も少ないことから、逆にトラブルを発見することが遅くなってしまうのです。

他にも、断熱材が湿気を帯び、カビが生えること、重量増により耐震性が落ちることなど、あります。特に重量増による耐震性が落ちることは、セルロースファイバーなど重量が重い断熱材を使った、4号建築物(木造2階建て住宅)では顕著です。構造計算などを行うと、かなり重量差があり、揺れにも影響してきます。瓦屋根をやめて軽量化すると耐震性が上がる、とはよく言われていますが、重量級の断熱材の施工で耐震性は大きく落ちます。新築なら、構造計算を行うことで耐震性を落とさないことが可能ですが、ただ単に断熱リフォームを行うと耐震性が落ちるので注意が必要です。

悪質リフォーム業者は総じて施工精度も低い。意味のない金物施工などとともに、施工精度が劣悪な断熱リフォームを行っている。

設計者として、個人的に過度な省エネ設計や断熱設計は、不要と感じています。デメリットが大きくなるからです。太陽光パネルも屋根重量が上がりますし、断熱材を増やせば建物重量が上がり、建物が受ける地震力は増えるからです。そもそも木造住宅は軽量なので、鉄筋コンクリート造の建物より地震力が少ないので、耐震性を出しやすいのがメリットでした。もちろん通常の施工での断熱設計などは問題にはなりにくいですが、最近流行の高性能な省エネ住宅の場合、耐震性がかなり落ちる物もみうけられます。実際、通常の施工で耐震等級3が可能な木造住宅の構造計算を請け負いましたが、太陽光パネル、断熱材の影響で、耐震等級2しか取れなかった物件もありました。

幸い2025年には断熱材や太陽光パネルの重量も加味した壁量計算の仕組みが義務化される予定です。でも重量が重ければ、それだけ耐震性が下がることは事実です。もしそれを覚悟で新築・リフォームをされる際は、耐震性アップも含めて検討してくれる業者に依頼されることをお勧めします。

なまあず本舗設計室では、断熱リフォームを行う際は、耐震診断を行い断熱リフォームの重量増を加味して補強設計も行います。新築の場合も構造計算で重量を確認し、より余裕のある設計にしております。ご心配な方はご相談くださいませ。