一酸化炭素中毒の恐怖と3つの原因~大阪ビル火災~

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12月17日午前10時半ごろ、大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4Fで放火があり、多数の死者がでた痛ましい事件になりました。被害者の皆様にお見舞い申し上げます。

さて、この火災は30分ほどで消し止められています。またビルは耐火建築物で消火後の写真や映像を見ても、それほど延焼していません。それなのに多数の死者が出たのはナゼでしょうか?建築的な見地で現在出ている情報を元に推定してみたいと思います。

まず一点目。この4Fはクリニックなのですが、入口付近で放火したこと。出口がエレベーターや階段が1箇所なので、そこで火をつけられたため逃げるのが難しかったことです。大きな建物だと、多数の避難経路が用意されていたり、避難階段があったりしますが、この建物は比較的小規模なため、一箇所だったようです。このようなビルは小規模ではたくさんあります。またガソリンのような液体をまいて暖房器具の近くで火を付けたとあるので、一気に燃え広がった可能性があります。避難方向が一箇所でなおかつそこを塞ぐように火災が発生し逃げ道を失ったため被害が拡大したようです。

二点目が、かなり人が密集していたこと。火災時に逃げ出す人間の速度はだいたいデータが出ております。人数が多いことで逃げ出す時間がかかってしまうのは想定できます。逃げ道が塞がれただけでなく、その階に人数が多くいたことが被害が多くなってしまった理由となります。もし火災が起こってもその階に人がいなければ人的被害はありませんので。

三点目が、一酸化炭素中毒です。初期に警察に届いた7名の死因のすべてが、急性一酸化炭素中毒だったそうです。情報によるとこの8階建てのビルの火災の4階は床面積79㎡で、燃えたのは約25㎡だそうです。入口付近が燃えたということですから、奥は燃えていなかったことが想定できます。恐らく火を見て建物の奥側に避難した人が多かったと思いますが、すぐに一酸化炭素などの有毒ガスが充満したことが想定できます。もしある程度の一酸化炭素が発生した場合、複数回呼吸しただけで倒れて意識をなくしてしまいます。目に見えないガスで無色無臭なので気がつきにくいです。2019年の建物火災死因では、一酸化炭素中毒・窒息がやけどを上回っていることから、非常に危険な現象です。

火災は非常に危険です。なので建物の耐火性などは上がってきて、火災の件数は長期的に減少傾向でした。しかしこのように意図した火災には無力な場合もあります。耐火建築物でも中に置いてある物までは規制出来ません。燃えやすい紙や内装はいっぱいあります。本来そこにないガソリンなんかまかれることは想定されていません。しかし京都アニメーションの事件も含め、このようなことが増えてくるとしたら、法的規制の前に、設計者は更に火災に対して安全になるように考えて設計していく必要があると思います。実際は狭小のビルも多くなかなか難しいのが実状ですが・・・。