日本の有史以来の地震と噴火の関連事例

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日本の歴史における噴火と大地震の関連事例

 さまざまな情報が錯綜した現在、大地震と噴火の関連性は深いと考えられるのだが、未だはっきりしていない部分もあります。日本の地質活動は活発であり、歴史を振り返ると、大規模な地震の後に火山の噴火が誘発されたり、あるいはその逆のケースが考えられる事例がいくつか見られます。以下は、そのような関連性が指摘されている主な事例と、それぞれの被害者数(推定を含む)を整理してみました。あくまで推定ですので、参考程度にしていただければと思います。

地震発生年月日 地震の名称・規模(M) 地震による主な被害・死者数 噴火発生年月日 火山名・噴火の概要 噴火による主な被害・死者数 関連性についての考察・注記
869年7月13日 貞観地震 (M8.3以上と推定) 津波により広範囲が浸水、溺死者多数(『日本三代実録』に「溺死千許」と記載) 864年~866年 富士山 (貞観大噴火) 溶岩流により広大な森林が焼失、埋没。人家や道路も被害。死者多数。 地震の約5年前に富士山で大規模な噴火が発生。東北地方の広範囲に火山灰を降らせた。地震と噴火の直接的な因果関係は明確ではないが、地殻変動の活発化という点で関連が考えられる。
1707年10月28日 宝永地震 (M8.6~9.0と推定) 死者2万人以上、家屋倒壊6万戸以上、津波による被害甚大。 1707年12月16日 富士山 (宝永大噴火) 噴火自体による直接的な死者は記録されていないが、大量の火山灰により田畑に甚大な被害、家屋倒壊、健康被害などが発生。長期的な飢饉の原因となった可能性も指摘される。 地震発生の49日後に富士山が大噴火。地震によってマグマだまりの状態が変化し、噴火が誘発された可能性が非常に高いと考えられている代表的な事例。
1914年1月12日 桜島地震 (M7.1) ※桜島噴火に伴う最大規模の地震 死者29人、負傷者122人、家屋全壊120戸。 1914年1月12日 桜島 (大正大噴火) 溶岩流により複数の集落が埋没。噴煙は高さ1万メートル以上に達し、広範囲に降灰。死者・行方不明者58人(地震によるものを含む)。 桜島の大規模噴火(大正大噴火)の開始とほぼ同時に発生した地震。噴火活動が引き起こした地震と考えられる。
2011年3月11日 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災) (Mw9.0) 死者・行方不明者2万2千人以上(関連死含む)、家屋全壊・半壊多数。 複数あり 東北地方の複数の火山(例:蔵王山、吾妻山、那須岳など)で地震後に火山性地震の増加や微弱な噴気活動の変化が観測された。 直接的な噴火被害はなし。 地震によって広範囲の地殻に応力変化が生じ、一部の火山で活動が活発化した可能性が指摘されている。ただし、大規模な噴火には至っていない。

海外における噴火と大地震の関連事例

世界でも同様の事例があります。あくまで関連していると思われているものを列記します。

地震発生年月日 地震の名称・規模(Mw) 地震による主な被害・死者数 噴火発生年月日 火山名・噴火の概要 噴火による主な被害・死者数 関連性についての考察・注記
1960年5月22日 チリ地震(バルディビア地震) (Mw9.5 – 観測史上最大) 死者 約1,655人~6,000人(諸説あり)、津波によりハワイや日本にも被害。 1960年5月24日 コルドン・カウジェ火山 (チリ) プジェウエ=コルドン・カウジェ火山群の一部。割れ目噴火。 直接的な死者は少ないが、広範囲に火山灰を降らせ、農牧業に被害。噴煙は高度6,000mに達した。 地震発生のわずか38時間後に噴火を開始。巨大地震による地殻の歪みや応力変化が、マグマだまりに影響を与え、噴火を誘発した可能性が非常に高いと考えられている代表的な事例。
2002年11月3日 デナリ断層地震 (アメリカ・アラスカ州) (Mw7.9) 死者なし。アラスカ横断パイプラインに損傷。 複数あり アラスカ州内の複数の火山(例:ランゲル山スパー山など)で地震後に火山性地震の増加や微弱な噴気活動の変化が観測された。 直接的な噴火被害はなし。 地震によって広範囲の地殻に応力変化が生じ、一部の火山で活動が活発化した可能性が指摘されている。地震波の通過による「動的トリガリング」と呼ばれる現象で噴火が誘発されるメカニズムも研究されている。
2004年12月26日 スマトラ島沖地震(インド洋大津波) (Mw9.1-9.3) 死者・行方不明者 約22万人以上(津波による被害甚大)。 複数あり インドネシアの複数の火山(例:タラン山メラピ山など)で地震後に活動が活発化したとの報告がある。 限定的。一部火山で小規模な噴火や火山性地震の増加が見られた。 巨大地震の影響で、周辺地域の火山活動に変化が見られた事例。ただし、全ての火山活動の変化がこの地震と直接関連しているかは、さらなる研究が必要な部分もある。
2010年2月27日 チリ・マウレ地震 (Mw8.8) 死者500人以上。津波による被害も発生。 2010年~継続 プランション・ペテロア火山 (チリ・アルゼンチン国境) 地震後に活動が活発化。小規模な噴火。 限定的。火山灰による影響など。 地震後に火山活動が活発化した事例の一つとして挙げられる。地殻変動によるマグマシステムへの影響が考えられる。
2015年4月25日 ネパール地震(ゴルカ地震) (Mw7.8) 死者 約9,000人、負傷者 約22,000人。 2015年5月12日 ネパール国内の温泉地・泥火山 (明確な火山ではないが地熱活動) 地震後に噴出現象の変化が報告された。 直接的な被害は限定的。 地震によって地下の熱水系や地殻の亀裂に変化が生じ、地熱活動が活発化した可能性が指摘される。大規模なマグマ噴火ではないが、地震と地熱活動の関連を示す事例。