木造3階建ての耐震基準の変遷と注意点

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こんにちは。今年も10月まで暑い日が続くそうです。うんざりしますね・・・。

最近、WEBサイトを見ていたら、木造3階建ても新耐震基準で安全とか、2000年の改正とかで安全とかいう記事がでてきました。木造2階建てなら正解ですが、木造3階建ては厳密な意味でも違います。

まず、法的に木造3階建ての個人住宅ができるようになったのは、新耐震基準の1981年ではありません。1987年に準防火地域に木造3階建てが可能になり、翌1988年に「3階建て木造住宅の構造設計と防火設計の手引き(通称青本)」という防火設計と構造計算のマニュアルがでて、実務的に可能になりました。逆にそれ以前の木造3階建て住宅はほとんど違法と言える(建築基準法施行前は別のお話)のです。極稀に、郊外の防火無指定地域では建てられていました。ただし1988年を過ぎても構造計算は非常に難しく本格的に普及を開始したのは、木造構造計算ソフトKIZUKURIの発売された1993年以降となります。

次に転機となるのは、2000年の建築基準法施行令の改正のあとの2001年に発行された「木造軸組工法の許容応力度設計(通称グレー本)」です。しかし難解で適用できる住宅が少なかったことから、青本のように一気に広がることはなく併用時代が続きます。とうより圧倒的に青本の設計が多かったように思えます。

次の転機は2003年です。この年、国から銀行協会等に新築の建築物向け融資を行うにあたり、検査済証を活用するように依頼し金融機関が協力を開始したことです。これまで完了検査を受けない違法状態の木造3階建てが乱造されていましたが、これにより検査済証の発行率は飛躍的に上がりました。

本格的に青本からグレー本に移行しはじめたのは法改正ではなく、2005年の耐震偽装事件です。2000年法改正にあったグレー本にここから少しずつ移行が始まり2007年の法改正を経て、2008年の「木造軸組構法住宅の許容応力度設計(通称新グレー本)」の発行で、一気に新グレー本に移行しました。移行した理由は法令の問題もありましたが、新グレー本で適用できる住宅が飛躍的に増えたことがあります。グレー本の欠点がかなり解消されたのです。

青本の欠点といえば、吹き抜けなどの計算ができないこと、勾配屋根などの水平構面の検討ができないことから、設計者判断で危険な設計が可能だったことです(他にもありますが)。また性能設計しにくいことも時代にそぐわなくなってきていました。

2009年に瑕疵担保履行法が施行され、保険加入が原則義務化されたことによる、基礎の検査、防水の検査、躯体(金物等)の検査されるようになり、施行不良が著しく減りました。この前後での木造3階建ての質的差は意外と大きいです。

次の転機は2017年の新グレー本2017の発行です。わずかにあった法との不整合などを解消して完成度が高まりました。

というわけで、大きく見ると

・1988年の青本の発行にともなう1993年の木造構造計算ソフトKIZUKURIの発売
→木造3階建てが量産されたが、検査済がない場合があり粗悪な建売が横行した

・2003年の銀行融資の検査済活用
→検査済証をとることが普通になり、品質が一気に上がる

・2009年の保険開始
→木造3階建ての欠点であるバルコニーまわりの等の雨漏りが減少する

あたりが、大きな節目といえるでしょう。建築基準法改正よりも、その他の要素の影響を大きく受けたのが木造3階建ての特徴でしょうか?

そのため中古の木造3階建てを購入するなら圧倒的に2009年以降をお勧めします。2000年代の木造3階建ての雨漏りが非常に多いのですが、2009年以降は大幅に減少します。木造3階建ては中間検査があり構造の検査もあったことから考えても保険によるバルコニーまわりの納まりの変化の影響は非常に大きいといえるでしょう。