金物「だけ」補強の無意味

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こんにちは!!

先日4月9日に島根で比較的大きな地震が発生しました。地震予測などをあざ笑うが如く、いろんなところにいろんな地震が発生します。毎年大地震が!!と叫んでいる方もいますが、そのような巨大地震の確率はわずかであり、なかなか発生しません。とはいえ、いつかは発生するのは確実です。用心にこしたことはありません。

さて、今日お話しするのは木造住宅の金物補強について。最近の新築木造住宅は金物だらけ。これを見て近所の一般の方は、昔建てたマイホームには金物がないな、と感じて不安に思う方がいてもおかしくありません。そこで一時期、金物「だけ」取り付ける金物補強が横行しました。手軽な反面、効果が薄いのが現状です。

新潟県中越沖地震(クリックで拡大)

この写真は、新潟県中越沖地震の写真です。平屋で瓦葺きです。右方向に傾いているのがわかります。

左隅を拡大しますね。

建物左角拡大

黒色で〇をつけた部分の左側。柱は土台から抜けてはいるのですが、それよりも壁全体が平行四辺形にゆがんでいませんか?

この建物は地震の揺れに耐えきれず、斜めになってしまったのですが、それは壁の強度が足りないから壁が先行してゆがんでしまいました。

もしこの建物に強い金物がついていても同じように壊れます。

なぜなら建築金物は、柱と梁(土台)が離れないように接合するもので、歪みを無くす物ではないからです。

昔の建物はそもそもが強度不足なことが多く、金物で止めるだけでは不十分で壁を強くする耐震化が必要です。

では、新築の建物はどうでしょう?上の写真のような古いものではなく、構造用合板や筋かいというものでしっかり作ってあり、見るからに頑丈です。

しかし・・・だからこそ欠点があるのです。

今度は上記のように平行四辺形に壊れません。先に柱が抜けてしまうのです。

阪神大震災

これは阪神大震災のときの写真です。柱が簡単抜けて倒壊しています。

実は、建物の耐震化は阪神大震災のような結構前でもずいぶん進んでいたのです。固い建物が増えていました。しかしその代償として、今まで考えられなかった柱が抜けるという視点が若干欠けていたのです。つまり建物が弱かった頃はそれほど気にしなくて済んだのに、耐震化が進んだことによって新たな弱点が露呈してしまったのです。

この教訓を活かし、金物の義務化は進み2000年の告示制定により、現在とほぼ同じ耐震構造が法的に整備されました。その後の地震での倒壊が少なくなってきているのは、このおかげかもしれません。耐震補強で必ず壁補強と金物補強をセットで行うのはこういった経緯からです。

現在は、耐震性のある面材などが発売され、更に耐震性アップしやすくなっています。しかしその設計がおざなりでは、せっかくの強度が発揮できません。必要な壁の量は「壁量計算」、必要金物は「N値計算」で算出できます。しかしながらその他にも耐震性に関わる要素はたくさんあります。それらを合理的に設計するためには「構造計算」が必要です。しかし日本では木造3階建て以上を除き、構造計算は義務化されていません。先日、日本弁護士連合会が、木造2階建て等のいわゆる4号建築物の構造計算義務づけを提言したことのニュースが流れていましたね。他の業界に指摘されるのは恥ずかしいことですが、なかなか難しい状況ではあります。建築設計事務所の設計者が自覚を持って法整備を行うまでもなく、構造計算された住宅を提供できるように努力していく必要があると思います。

しかしそれ以上に必要なのは、現場監理の徹底です。きちんとした設計図書を作ってもきちんと施工出来なければ意味がありません。現在木造2階建ては構造の現場検査がないのが普通です。また建築士が構造の知識が薄いために問題が発生することがあります。設計と監理はきちんと行わなければなりません。

なまあず本舗設計室では、自社で構造計算を行えるメリットを活かして耐震性の高い住宅の設計を行っております。そして設計エリアを定めているのは、きちんとした監理を行うためです。遠方ではなかなか回数行くのは難しいですし、いざというときの対応が難しいですから。設計事務所は通常営業エリアは非常に広いはずなのにどうして??と思われる方もいらっしゃると思いますがご了承くださいませ。